第7回大会 審査員総評/ General Comments by Jury

2019-01-28 14:27:41

AK0_5335_small
第7回大会 審査員総評/ General Comments by Jury

最終審査会を経て、総合プロデューサーでもある審査員の石多から今大会の総評とファイナリスト各作品のレビューが届きましたので、ぜひご覧ください。
General Comments by Jury just arrived!!

※英語の総評は下記リンクからもご覧いただけます。
※Please check from the link below.(PDF)
・第7回大会 審査員総評 (日本語)
・General Commnets (English)


1minute Projection Mapping in みやざき総評

2012年より始まったこの大会は宮崎で第7回目を迎え、歴史の積み重ねを感じています。まずは多くのエントリーと作品を寄せて頂いたクリエイターの皆さんに改めてお礼申し上げます。

この7年間の間にもプロジェクションマッピングを含めた映像やアート業界はめざましく変化を続けており、この時代にいかにフィットさせていくか?それは大会としても大きな課題だと考えています。
建築へのプロジェクションマッピングそしてこうした大会は、実は「先進性」というよりも純粋な「映像表現」として競われている部分が強くあります。小型のプロジェクションマッピングは欧米では「Micro Mapping」とも呼ばれ、こちらは映像表現の個性や技術に加え、映像を反映させる対象物や鑑賞者との関係性、空間の演出手法まで独自に完結させることができ、先進的な表現やチャレンジ性の大きなフィールドになるのです。
話は少しそれましたが、表現手法やそのバリエーションが横方向に拡げる研究・リサーチとしてあるとするなら、完成や成熟を目指す奥行きも大事になります。建物でのプロジェクションマッピングにおいてはまさにこの部分にあたり、いま成熟期にあるといえるのです。
我々のような国際コンペティションでは、こうした多角的に未来を見据えたビジョンが必要であり、それを内容や結果として提示していく義務があると考えています。年々この大会もレベルが高まり、エントリー数や注目を集め若手やニューフェースが現れてくることはとても嬉しく、主催関係者一同は身が引き締まる思いです。

第7回大会の会場、映写対象となった「宮崎県立美術館」は、これまでのコンテストの中で最もファサードの造作がシンプルで、映写向きな建物となりました。そしてテーマは過去の中でも最も具体的な「神話/伝説」としました。このことから

対象の建築を活かす < 映像表現

となることが予想されていましたが、プロジェクションマッピング表現として一般的になった「3D表現」だけではなく、もっと柔らかく幅のある映像や手法も見てみたいと考えました。特に新たな表現や独自性を考える時には、既存のものに縛られては前進をのぞめるはずもなく、一度それらを壊し、別の方向へ向かうことで、表現がアップデートされるということがあります。今回はあまり「プロジェクションマッピング表現である」という部分に縛られすぎず、映像の表現や美しさ等の広がりにも期待しました。その結果実に豊かな表現バリエーションが現れ、今後に向けての示唆やとても刺激の多い大会になりました。
また、今回据えた「神話/伝説」という製作テーマは、過去にはない具象性を持ったもので、これまで曖昧でもある種許された作品の意味合いを、しっかり描き伝えることが必要となり、映像としてもそれをいかに表現するか?こうした点を含めた、コンペティションとしての要点を1分台の表現時間の中で描き伝えるには、映像の見た目だけではなく、構成と演出力も大変重要です。

過去最多となる42の国と地域から寄せられた125組のエントリーの中から、最終的には19の作品を審査対象としてファイナリストに選考させていただきました。そして私を含む5人の審査員が実際の建物へのプロジェクションマッピングを見て厳正に審査をし、その結果を出させていただきましたので、改めて発表させていただきます。

==============================================

【受賞作品一覧】
※「タイトル」チーム名(国名)

グランプリ:「The Nine Colored Deer」LiCheng(China)
準グランプリ:「Ice Winter Sakura」ArtZebs Gallery(Ukraine)
審査員特別賞:「Stag」Fluid(Hungary)
宮崎県知事賞:「KAMISHIBAI」DECIDEKIT(Thailand)
オーディエンス賞:「The Nine Colored Deer」LiCheng(China)
特別賞:「Chaos」High Files Visuals(Italy)
特別賞:「Quimera」AVA Animation & Visual Arts(Mexico)

==============================================

グランプリ
「The Nine Colored Deer」LiCheng(China)

今回見事にグランプリとオーディエンス賞の二冠に輝いたのは、中国の李成による「The nine colors of deer」という作品でした。この作品は映像製作技術に優れているのは勿論、美しいデザインと人の心を動かすような情感溢れる世界を提示しました。プロジェクションマッピングはともすると「人を驚かす」ということが命題のようにされますが、このように人の感情へ丁寧にアプローチした作品はこれまであまり例がないように思われ、審査員からも高い評価を得ました。何度もいつまでも見ていたいと思わせる完成度の高さは見事でした。


準グランプリ
「Ice Winter Sakura」ArtZebs Gallery(Ukraine)

次に準グランプリとなったのは、ウクライナの新鋭ArtArtZebs Galleryによる「Ice Winter Sakura」がファイナリストへの繰り上げ受賞の勢いそのままに見事受賞となりました。
テーマ性には弱さがありますが、シンプルな3D表現を用いながらもデザイン性にフォーカスし、随所に神話を思わせる印象的なシーンを描き出しました。


審査員特別賞
「Stag」Fluid(Hungary)

3位の審査員賞を受賞したのは、ハンガリーのFluidによる「stag」。昨今のメインストリームである3D的な表現は一切用いず、独特でシンプルな世界観とデザインを貫き、とても印象に残る作品でした。2D表現、しかも色は金色のみを用いていましたが、非常に空間も色彩感覚も豊かに感じさせる秀作でした。


宮崎県知事賞
「KAMISHIBAI」DECIDEKIT(Thailand)

宮崎県知事賞を受賞したのは、タイのDecide Kitによる「Kamishibai」という作品で、世界中の様々な神話を分かりやすく綺麗に描き、オーディエンスからの人気も非常に高い作品でした。独りよがりではなく、観客や日本を意識した作品で、飽きのこないエンターテイメントとなっておりました。


オーディエンス賞
「The Nine Colored Deer」LiCheng(China)
19_116_The-Nine-Colored-Deer_LiCheng
オーディエンス賞は、グランプリがダブル受賞となり、作品内容については割愛しますが、審査員と観客の評価が重なるのは近年では稀なことで、それだけこの作品が優れていたのだと言えます。


作品選考には審査員達が議論をしたのですが、今回もレベルが高く、賞を与えたい作品がまだまだありました。そして2つの作品に対して審査員から賞を用意致しました。

特別賞
「Chaos」High Files Visuals(Italy)

まずイタリアのHigh Files Visuaが制作した「chaos」という作品で、白黒の表現ながらこれまでにあまり見ない質の作品でした。その挑戦的で新鮮な点に評価が上がりました。


特別賞
「Quimera」AVA Animation & Visual Arts(Mexico)

もう一点は本大会の常連となっているメキシコのAVA Animation and Visual Artsによる「Quimera」です。南米のデザインを美しい3DCGとして作り上げ、とても印象に残る美しさと強さを兼ね揃えた作品で、審査でも上位に位置しておりました。

==============================================

受賞作品にのみコメントを書きましたが、他にも素晴らしい作品があり、賞を贈りたかったものが多々ありました。

さて次回の第8回は既に審査会でも公表致しましたが、神奈川県の小田原市での開催です。そして小田原城という日本建築のシンボリックな存在が映写のモチーフとなります!
映像表現としてはこれまででも一番難易度が高く、日本の屋根が存在することでの、細かで複雑な建築の仕様にどう向き合うのか?単純な映像ではこの造作を活かせないばかりか絵として破綻した作品となりますので、そこへの考え方アプローチが大きな課題、表現要素となります。今回の宮崎とはある種まったく違うアプローチが必要となりますし、建築と映像が組み合わさった時のデザインを想像する力や経験値が問われて来そうです。こうした日本の城へプロジェクションマッピングをできる機会というのは、まさに千載一遇であり、多くの方に挑戦して貰いたいと思っております。

特に、宮崎大会では日本勢の受賞が無かったこともあり、小田原大会では是非日本から受賞作品が出る事を期待しております。

最後に、今回ご参加くださったクリエイターの皆様へ感謝を申し上げると同時に、引き続きプロジェクションマッピングの新たな1ページを一緒に描くことができましたら幸いです。
ありがとうございました。

1minute Projection Mapping総合プロデューサー
石多 未知行(PMAJ代表)