第6回大会 審査員総評/ General Comments by Jury

2018-05-22 13:47:19

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最終審査会を経て、審査員から今大会の総評とファイナリスト各作品のレビューが届きました!!
General Comments by Jury just arrived!!

※英語の総評は下記リンクからもご覧いただけます。
※Please check from the link below.(PDF)
・審査員総評 (日本語)
・General Commnets (English)


1 minute projection mapping in ハウステンボス 総評

2012年に始まったこの国際コンペティションも第6回を数え、ハウステンボスという有名なアミューズメントパークでの長期間開催という、我々企画者にとっても新たな挑戦を行いました。これまでに参加して下さった数多の素晴らしい作品が積み上げた歴史の上に、今回は過去最多となる39の国と地域から123組ものエントリーが寄せられました。改めてエントリーして下さった参加者の皆さんに心より御礼申し上げます。

さて、審査は複数回に分かれて最終審査へ帰結しております。エントリーから寄せられた作品の映像のみでの審査でまずは38作品に。次に実際の上映した状態での審査で、ファイナリストの16作品まで絞り込まみ、最後に4/28の公開審査へと至るという道のりでした。今回はこれまで以上に作品の幅も拡がり、大変ハイレベルな大会になりました。そして世界的なゲストを交えた素晴らしい審査メンバーで、グランプリをはじめとした各賞を決定しました。
改めてここで結果とともに、審査員を代表して第6回大会について総括させて頂きます。

今回のコンペティションはHANA(花/華)というテーマで公募されたました。まず一次選考を通過した38作品から、最後のファイナリストを絞り込む作業も大変難しいものでした。実際にはファイナルに残れるクオリティの作品も多々あったのですが、そこでは「作品の幅」という観点からも、テイストや表現が似た作品は絞り込むなど、断腸の思いで削らねばならない作業でした。最終審査においては、やはり作品の幅が非常に広い為に、各賞を決める審査ポイントをどこに持ってくるかなど、審査員たちの間でも様々に議論が交わされました。最終ステージに残っている作品はどれも素晴らしく、それぞれに強みを持ったものが集まっており、意見が分かれるなど審査員達も判断に悩まされ、各賞の決定には時間を要しました。当初予定していた賞は全部で5つだったのですが、最終的に審査員賞を2つに増やし、合計6つの受賞者と作品を出すことにしました。
全体の印象に残った点として、スペイン勢がアート性溢れる強い存在感を示しファイナルに3組残ったこと。そして建物中央に仮面や顔を配した作品が多かったのが特徴としてあげられました。今回の映写キャンバスとなったパレス ハウステンボスは高さ28m×横幅110mもある、とてもワイドな煉瓦造りの建物だったのですが、この横に長いスケール感を味方につけられたか?そして煉瓦や屋根と白塗り部分とのファサードの色味の違いを加味しているか?こうした点というのも作品完成度や現場での体感性など、評価のポイントに大きく影響してきました。
また、挑戦的な作品が多かったのも国際コンペティションとしての質が上がった要因だと思っております。既存の表現をなぞらず、新たな表現手法や方向性を示すということは表現者として重要なスタンスであり、それが感じられる作品が多かったのもありがたいことでした。

それでは、グランプリより各賞の受賞ポイントなどをここに記していきたいと思います。

グランプリ
「ArchiLymph」Antaless Visual Design(Italy)
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このハイレベルな作品群の中にあって、グランプリを受賞したのはイタリアのAntaless Visual Designによる「ArchiLympht」という作品。映像製作やマッピング演出の技術、そして作品の構成バランスに優れ、審査得点も高く、全体の中でも一致した意見として選出されました。プロジェクションマッピングらしい、ある種王道を行くような作品ではありましたが、高い完成度や抑揚のある演出テクニックなど、全体を通して大変見応えがあり、会場でも多くの観客を魅了していました。ウィークポイントとしてはテーマへの印象が弱かったことが審査の議論に上がった他、後半では3Dのアニメーションを多出させ過ぎた感がありました。しかしそうした部分を補って余りある完成度と1分台での構成力で、見事グランプリに輝きました。

準グランプリ
「Luna」AVA Animation & Visual Arts(Mexico)
22
2位を受賞したのはメキシコのAVA Animation & Visual Artsが手がける「Luna」という美しい作品でした。テーマのHANAと自分たちのチームらしいカラーをうまく組み合わせ、月夜に浮かび上がる幻想的な宮殿のビジュアルを描き出し、月の光に照らし出される儚さを感じる演出も魅力的な作品でした。実はこの2位の決定に一番時間を要したのですが、この作品が持つ繊細な美しさは反面では存在感の弱さともなってしまっていました。また途中で出て来る人のCGが全体の中でもっと意味や繋がりを感じられると、もっと強い作品となったように思います。

審査員特別賞
「Asagao」Hotaru Visual Guerrilla(Spain)
5
混戦を極めた今回の審査として、審査員特別賞は2作品に贈られることとなりました。
1つめはスペインのHotaru Vsual Guerrillaによる「Asagao」で、とてもアート性の強い作品。他の上位2作品と比べて、シンプルに突き詰めた世界観と表現はとても潔く、建物自体が強く訴えかけ、また見る人の心に強い余韻を残す作品でした。
今回はアート性の高い作品が数多く寄せられたのですが、その中にあっても、本作品は突き詰められた質、この建物へプロジェクションマッピングしていることへの親和性など、高い完成度を有していました。

審査員特別賞
FAB Asia「Masks」(Hong Kong)
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もう1点の作品は香港のFAB Asiaによる「Masks」というその名の通りの仮面を使った作品で、二つのマスクの出会いが最終的に花を開かせるというとても展開に富んだ見応えのある演出でした。受賞作品の中でも一番印象に残る強い作品として、審査員の得点部分でも高い評価を得ていました。全体的にマスクの印象が強すぎて最後の花への繋がりが強引な所で、そこがスムーズだとより完成度の高い強い作品になったと思います。また、多くの一般客が観る場での作品としては、ダークな印象を少なからず与えてしまったというのも審査の話題として上がりました。

ハウステンボス特別賞
「Light Rhapsody」Los Romeras(Spain)
51
ハウステンボス特別賞に輝いたスペインのLos Romerasの「Light Rhapsody」は限られた時間の中での表現の幅も広く、それでいて全体の統制のとれた演出が素晴らしい作品でした。特に序盤のピンクと青の花が暗がりから咲く瞬間は、とても印象的で美しい空気が流れる瞬間を描き出しました。また、クラシックをベースとしたの音楽のセレクションも独特な世界観と存在感を強くすることに成功しています。

オーディエンス賞
「SMILE」Decide Kit Co., Ltd.(Thailand)
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オーディエンスからの絶大な人気を得たのはタイのDecide Kitによる「SMILE」。
冒頭のアジアらしい壮麗なデザインから始まり、そこから日本の三味線音楽に乗せて汽車が花を運んでくるというダイナミックで楽しい作品でした。折り紙を使った全体の構成や、最後に日本語で「はじめまして」という言葉を入れるのも小憎い演出で観客を楽しませ、多くの票を獲得していました。

残念ながら受賞とはならなかったものの、ファイナリストに残った16作品はどれも素晴らしかったので、受賞作品以外もそれぞれポイントを交えて紹介します。

OCUBO CRIATIVO 「Seasons」(Portugal)
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まずご紹介したいのが、審査員の評価としてもかなり高かった挑戦的な作品で、ポルトガルのOCUBO CRIATIVOによる「Seasons」です。CG全盛の昨今にあって、全く逆行するリアルな花やカラフルな液体が建物に添って垂れてくるような演出はとても斬新で、審査員の興味を強く引
きました。

Maabee「Friction」(Japan)
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日本の作品でファイナルまで残った2作品のうちの1つで、こちらはエンターテイメント性に溢れたテンポ感のいい作品で、観客からも多くの人気を集めました。冒頭の無色から建物全体に色が広がるシーンがとても印象的で美しかったのですが、全体を通した世界観や独自性を描
けると、より良い作品になったと思います。

Filip Roca「The Last Blossom」(Spain / Montenegro)
8
モノクロをベースとした繊細でアーティスティックな作品。まるで雪の中から1輪の花が突如力強く咲いたと思うと、微かに赤い色を見せると儚く消えていく、そんな詩的で美しい作品で、フィナールへ向けてシンプルに研ぎ澄ませることで、最後のシーンで強い印象を残します。

HU XINYUAN – SKGMEDIA「LIL LIFE」(China)
38
力強い音楽と共に、建物全体が躍動しているような演出がなされ、バリエーション豊かな表現の数々は、エンターテイメントとして仕上がっていた作品でした。表現を詰め込んでしまった感があったので、表現内容を整理して構成を突き詰めるとより存在感を示せたと思われます。

Niculin Barandun「Tane 」(Swiss)
3-2
明確なコンセプトと芯を持ったシンプルで挑戦的な作品でした。種が地に根を伸ばし、その根が力強く建物全体を侵食して、最後には花々を咲かせるという演出で、とても印象的で有機的な植物と建物をうまく組み合わせた作品でした。植物が育つ強さを、縦横をうまく使って
ダイナミックに表現されていました。

Viktor Lukacs「Abstract Reality」(Hungary)
81-2
建物をダイナミックに動かすという、プロジェクションマッピングの特徴や醍醐味とも言える迫力ある演出をふんだんに盛り込んだ作品でした。途中に入る情景のシーンが全体の構成の中で、自然で効果的なつながりを出せると作品性が上がったのではないでしょうか。

Sunnana inc.「月華天昇 – gekka tensho –」(Japan)
47-2
月をテーマに持ってきた日本チームの作品。詩的で情緒感があり、とても日本的な美しさと儚さを同居させており、ピアノと淡いボーカルが添えられた音楽と相まって多くの観客を魅了しました。また途中に文字を散りばめるという演出も挑戦的で、アニメの表現を彷彿とさせる様
な、ハッとする瞬間も絶妙で気持ちのいい作品となっていました。後半の万華鏡の様な綺麗なビジュアルからもう1展開あると、厚みが出た様に思います。

VJ Reinish「Elements of Life」(Ukraine)
7
非常に個性的で、シンプルながら質感に飛んだ作品でした。ワイドな絵づくりに加えて、後半部分にもう少し建物を活かした演出や表現の面白さが入ってくると、作品の豊かさがまして、より強く存在感や作品性につながると思われます。

Jakub Zuscin「Becoming」(Slovakia)
37
今回の最年少で、唯一の学生ファイナリスト作品。非常に独特な世界観や空気を持った作品で、とても印象に残る絵づくりがなされていました。もう少しどこかに展開や変化を与えられると、元々の強い個性がより引き立てられ、作品性を高めることが思います。

Lzy Visual – Esa Perkasa Novesada「Dasamuka – The Ten Faces」(Indonesia)
30-2
日本とインドネシアの仮面を用いた作品で、演出の幅も広く、音楽的にも楽しい作品で、仮面の変化や動きと、建物のビジュアルや動きが変化するシーンはとても迫力がありました。最後に植物をまとった美しく中性的な顔が現れるというシーンも完成度を上げながら、作品としての奥行きを与えてくれています。

以上、ファイナリストの作品へ少しコメントを記載させて頂きましたが、ファイナルに残らなかった作品も実は当落線上で細微な差なものが多数ありました。その際のポイントとしては、プロジェクションマッピング手法として、建物への意識をどこまで持っているか?1分台の作品としての構成内容、他の近い表現との比較、コンペティション全体としてのバリエーションを維持する為の選定といったことが挙げられます。
・他の作品との違いや独自性を持っているか
・1つの作品としての完成度や見応えといったバランス
・単なる映像ではなく建物へマッピングする意識
こうしたところは今後のこのコンペティションに参加する意味でもご参考頂けるのではないかと思います。

次のコンペティションについては、現在準備をしており、夏までには発表させてもらいたいと考えております。この次の大会でもできるだけ多くのクリエイターの皆さんに前向きにご参加して頂ける様に、魅力的な会場の選定、テンプレートの質、来場された際のおもてなし、そして交流の場など、スタッフ一同でより実のある内容と質を目指してまいります。
引き続きクリエイターの皆さんには、この1 minute projection mappingという企画にご参加頂き、一緒に育てていただけたら幸いです。

石多 未知行/Michiyuki ISHITA
1 minute projection mapping/総合プロデューサー
Projection Mapping Association of Japan/代表